触れるようなキス  ふれるようなきす












「神子殿?」


足をひょこひょこと庇いながら歩く姿に気付き、泰衡は声をかける。


よく見ると足首には包帯が巻かれており、膝にも擦り剥いたような傷がある。


「…また転んだのか?」


少し呆れたように、泰衡は小さく溜め息をつく。


「ど…どうしてわかるんですか!?」


「…いつものことだろう」


軽く嫌味にも取れる言葉に口を尖らせ、望美はふいっと顔を逸らす。


「少しは心配してくださいっ」


「その程度、心配するまでもないだろう」


さらりと答える泰衡にカチンと来た望美は、もう行きます!と踵を返した。


その時だった。






ふわり。






望美の身体が、優しく抱き上げられた。


「や…泰衡さんっ!?」


泰衡の行動に驚きつつ、望美は頬を紅潮させる。


「…部屋に行くのか?」


「え…あ、はい…」


突然すぎて…だが、この温もりが嬉しくて、望美は思わず笑みを浮かべた。






それは、ほんの少しの距離。






すぐ部屋に着き、泰衡は望美をそっと下ろした。


「…大人しくしているんだな」


泰衡はいつものように眉間にシワを寄せる。


「やっぱり…心配してくれてたんですか?」


「貴女以外に金の遊び相手はいないのでな」


あ〜そうですか…と、望美は軽く頬を膨らませる。


その時。






     肘も擦り剥いたのか。






泰衡の唇が、肘の形をなぞるように触れる。


「……っ」


くすぐったそうに…どこか恥ずかしそうに、望美はびくんと身体を震わせる。


「…突然、静かになったな」


意地の悪そうな笑みを見せ、泰衡は望美をふわりと抱き締めた。


そして。






ここも怪我をしたのか?






望美の唇に、触れるだけの優しい口付けが落とされた。














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